懇話会での経験から見えてきたのは、死刑制度をめぐる対立が、意見や立場の違いだけに由来するものではないということです。その背景には、情報の偏在、支援の不足、対話の欠如、そして社会的想像力の限界があります。死刑制度を問い直すことは、単に一つの制度を批判することではなく、私たちの社会そのものをどうつくり直していくのかという、より大きな問いに繋がっています。
懇話会の議論はホームページに議事録として公開されています。ぜひ多くの方に目を通していただきたいと思います。
この経験を通じて、私は、死刑制度についての議論がより開かれたものとなり、社会の中で自然に語り合える空気が広がっていくことを強く望むようになりました。若い世代が教育の中でこの問題に出会い、自分の頭で考え、議論に参加できるような仕組みづくりも急務です。
死刑制度がなくなる未来は、決して遠い夢ではありません。それは司法制度の成熟であり、人権を尊重する社会への進化です。そして、その一歩は、対話に耳を傾けることから始まります。
私にとって「死刑制度を考える懇話会」は、単なる議論の場ではなく、自分自身の価値観や社会との関わり方を根本から見直す契機となりました。この気づきを、できる限り多くの方と共有し、未来への道を共に考えていければと願っています。
【著 者 略 歴】
片山徒有(かたやま・ただあり)
被害者と司法を考える会代表。1997年11月にご息子(隼さん、当時小学2年生)を交通事故で亡くす。この時の捜査機関からの理不尽な対応を機に、被害者支援と司法制度改革の必要性を痛感し、2000年に被害者支援団体「あひる一会(あひるのいちえ)」を設立した。2007年には「被害者と司法を考える会」を設立。被害者の権利実現に向けた被害者支援の活動を行うとともに、再犯防止のための取り組みも精力的に行い、少年院や刑務所での講演や面接を通じて「被害者の視点」を伝える活動を行っている。
